■作品の方向性を示す第1話では物語の舞台となる「竜宮島」が、じっくりと描かれます。
夏らしい、湿気をはらんだ空気と家並み、そして学校へ向かう子供たちとそれを見送る親たちのなにげない会話…そんな日本の、どこにでもあるような、「ふつう」の風景。
対して島の「本当の姿」である「アルヴィス」の施設は、未来的なデザイン、耳慣れない用語が飛び交う世界。
竜宮島の中にふたつの舞台があるということをドラマの中で伝えているのですが、アニメ的には「カッコイイもの」であるアルヴィス」やロボット「ファフナー」を、「異質なもの」として映しているのが印象的。
そうしたふたつの舞台のコントラストは、登場人物の台詞回しにもよく顕れています。水面下で訓練、準備を重ねてきた大人たちは、いったん戦いが始まれば「ふつうのお父さん、お母さん」のようすから一変、きびきびと戦闘指示を出したりもするけれど、14歳の子供たちは、ごくふつうのことばで、SF作品としては場違いなまでののんびりとした話し方で「ファフナー」を操縦します。
しかしある日突然、戦いの中に放り込まれたなら、たとえ厳しい状況であっても14歳ならばそれが「ふつう」なのかもしれません。
子供世代は、担当声優も若手を中心に固められていて、シリーズを通してしだいに成長してゆくさまや、世界の真実を少しずつ理解してゆく気持ちが、その声を通じてよく伝わってきます。
また何十とある設定を説明することよりも、「がんばって」と、声をかけてあげることや、「ありがとう」と、感謝の気持ちを伝えるというような、誰かが誰かと暮らしてゆく上で当たり前のことを、ふつうの会話の中で伝えることのほうに時間を割いているのも、この作品の大きな特徴です。
ことばや舞台、そして人物の芝居…大きなドラマを支えるこまやかなことを通じて「ふつうのこと」をたいせつに描いてゆくこと。
それは「帰る場所があるから戦うことができる」という作品のテーマのひとつをことば以上に明確に語っているようです。
■オープニング映像は、はばらさんによる演出。
こちらでも四季のある、島のおだやかな風景と激しい戦いの二面性が描かれます。
歩く、走る、座る…という「日常」のゆったりとした芝居と、ファフナー各機が空を飛び、地を揺らし稼動する「非日常」という、アニメーションとしても強いコントラストが、激しさと切なさを合わせ持った楽曲とみごとにリンク、作品の印象を伝えています。
本編映像は4:3の比率で制作されていますが、このオープニング映像では画面上下に海と空を配し、擬似的に16:9の比率になっていて、よりダイナミックな映像を楽しむことができます。
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メインスタッフ
監督 羽原 信義
助監督 山岡 信一
文芸統括 冲方 丁
シリーズ構成 山野辺 一記 冲方 丁
ベースプランニング協力 山野辺 一記
キャラクターデザイン 平井久司
メカ・プロップデザイン 鷲尾直弘
美術監督 小山 俊久
色彩設定 関本 美津子
3D監督 本間 潤樹
製作 XEBEC 竜宮島役場
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